2021/12/29
「下手でも形に残るものを」鈴木善一さん
令和3年12月の初旬、浜松市南区にお住まいの鈴木善一さんという方をお訪ねして、いろいろとお話を伺ってきました。
鈴木さんは現在76歳。定年まで会社に勤め、定年後も会社に残り働いていましたが、63歳の頃にふと「このままずっと歳を取っていくとどうなるのだろう」と考えたそうです。それまでは仕事一本でやってきて趣味もろくにないし、「なにか新しいことをしたい」という思いに駆られた鈴木さんは仕事を退職し、第二の人生を模索し始めました。
ちょうど浜名湖ガーデンパークで公園の管理のボランティアを募集していたので参加。それと同時に初心に帰って勉強もしてみたいと思い、大学の通信講座で以前から興味のあった日本史を学んだのだそうです。
その後、ガーデンパークのボランティアで知り合ったお友達が浜松市の「観光ボランティアガイド」の活動をしていて、その方に誘われて鈴木さんも仲間に加わりました。学んだ日本史の知識を活かせることも多く、観光客の方が喜んでくれることが嬉しく、この活動は10年近く続けました。
もう一つ、鈴木さんが常々やりたいと思っていたことが「絵を描くこと」でした。ちょうど浜松市のヒューマンセミナーでパステル画の講座があったのでそれを受講。講座自体は短期で終わりましたが、引き続きその先生が主宰する会に入って絵の勉強をしたそうです。今までは主にパステルで風景画を描いてきましたが、今後は水彩画にも挑戦してみたいと思っています。
また、日本史を学んでいる頃、大学のある奈良に行くことが多かった鈴木さん。仏像を見る機会もよくあったそうで、その美しさには大いに魅了されましたが、彫刻とかの知識は全くなかったため、「自分で彫ってみたらいろいろわかるのに」と思っていたそうです。そんな折に、やはり浜松市のヒューマンセミナーで小さな仏様を彫る講座があって、それに参加したところ面白くて、現在は「遠江円空研究会」というサークルに所属して円空彫りの勉強を楽しんでいます。
さらに、最近では観光ボランティアガイドの先輩の紹介で、正晨寺というお寺の住職が主宰する「和歌・韻文教室」にも所属して、毎月短歌作りの腕も磨いています。これもご縁あって飛び込んだ新しい世界ですが、今まで学んできた歴史などの延長にあることなので、楽しんで勉強を続けられています。
鈴木さんが一番最近に作った歌を紹介していただきました。
「鑿を持ち はや八年余いつの日にか 思い通りの円空仏を」
お若い頃は仕事に没頭して社会や家族のために働き、第二の人生も精一杯学び人生の幅を広げている鈴木さん。アクティブに活動するお姿はとても若々しく見えます。そのモチベーションの源は「なにか形のあるものを残したい」ということなのだそうです。そして鈴木さんはこう語ります。
「絵画・彫刻・短歌と一生懸命にやってはいますが、自分ではどれも下手だと思っています。でも、だからこそ諦めることなく『もっと上手くなろう』『もっと頑張ろう』という気持ちを持てるので、毎日が楽しいです」
穏やかな語り口で、楽しそうに夢を語る鈴木さん。お話を伺っていてこちらも楽しくなってきます。これからシニア世代を迎える人達にアドバイスをお願いしたところ、「とても私なんかが人様にアドバイスなどできる立場ではありません」と謙遜しつつも、
「みな人それぞれに考え方があるので、自分の好きなことをやればいいと思います。年寄りだからとか言わないで70歳は70歳なりに、80歳は80歳なりに頑張れることを探してやってほしいと思います。私のできることとしては、いろんな人に楽しむ機会をを与えてあげたいという思いはあります。」
とのこと。鈴木さんのますますのご活躍をお祈りします。合掌
取 材:生きがい特派員 丸山 敬(西部地域担当)