2021/03/11
〈藤枝発〉「石上清兵衛・処刑事件」を伝え、後世に繋ぐ顕彰会
私たちは今、コロナウイルス感染拡大がなかなか止まない不安の中で、日々を過ごしています。
私たちのご先祖様たちも、いろんな災害や疫病、それに戦や飢餓の中で必死に生き抜き、命を繋ぎ、そのおかげで今日の私たちが生かされていることに、今回のコロナ禍の中で改めて痛感させられます。
こちら志太地区でも幾多の大きな地震・津波・洪水・飢饉、数えきれない程の生活に困窮した歴史がありました。
そんな中で、江戸時代に起こった特筆すべき事件がありました。
それが元禄5年(1692年)3月4日、駿河国志太郡高柳村(今の静岡県藤枝市高柳)で起こった「石上清兵衛・処刑事件」です。
高柳村の庄屋であった石上清兵衛は、数年間続いた不作で苦しむ農民のために、自分の首と引き換えを覚悟の上で、年貢米の減免をするよう田中藩に直訴したのです。
代官に直訴する石上清兵衛〈紙芝居より〉
直訴はご法度であり、石上清兵衛は罪人として25歳の若さで茶屋河原において処刑されたのでした。
村では清兵衛地蔵を祀って菩提を弔い、明治時代には「義農清兵衛」の木像も奉納されました。
清兵衛さんの木像〈藤枝市養源院〉
石立像がこの地蔵堂に祀られている
そして現在も、地元の高柳地区の住民有志でつくる「石上清兵衛を顕彰する会」(谷沢靖策会長)が、清兵衛の勇気ある行動と遺徳をしのんで、毎年追善供養が行われています。
追善供養の様子
今年も命日の3月4日(木)、追善供養が行われた藤枝市高柳の養源院に取材に伺い、「石上清兵衛を顕彰する会」の相談役・櫻井喜代司氏(85歳)にお話を伺いました。
「来年、没後330周年を迎えるにあたり、更に後世に伝えるべく遺徳を顕彰する胸像を建立する発起人会を設立しました。また、今までは罪人ということで公の機関ではあまり取り上げられませんでしたが、近年、地元の小学校では道徳の授業で取り上げられ、紙芝居にもなり、中学校の社会科副読本や藤枝市史編纂委員会の資料集にも加筆され、さらに郷土資料館でも広いスペースをとって紹介されています。
建立予定の胸像と彫刻家松田裕康氏
小学校の道徳授業風景
このような「石上清兵衛を顕彰する会」の活動が、地域の皆さんがひとつになり、さらに豊かな高洲地区の発展に繋がることに寄与できれば、それが清兵衛さんへの一番の供養になると思います。」と語られています。
さらに、櫻井喜代司氏は地域住民組織「高友会」で市非核平和都市宣言に協賛する「平和夏祭り」、市民自主講座の「高洲区民学級」、遊休農地を活用した「ふれあい農園」等の世話役をされ、更には国県市から全額援助を受け発足した「高柳美野理会」において農地や自然を守り、用水路等の長寿命化活動を行って来られました。
体験農園でのジャガイモ掘り
そのような活動の日々を振り返りながら、また、ご家族とのこれまでの絆をまとめられたメッセージが、しずおか健康長寿財団主催「令和2年度静岡県すこやか長寿祭第21回熟年メッセージ大会」において準グランプリを獲得されました。
熟年メッセージ大会準グランプリ受賞の櫻井喜代司氏
北村藤枝市長に報告する櫻井氏
【「~介護保険制度に感謝~次世代につなげたい活動に、もう一汗を!!」というタイトルで下記からご覧になれます。】
【お知らせ】令和2年度 第21回熟年メッセージ大会 グランプリ・準グランプリ作品の動画を公開します|しずおか健康長寿財団
田園風景が続いていた高柳地区も年々住宅化が進行していますが、「石上清兵衛を顕彰する会」「高友会」「高柳美野理会」等の活動を通して、いつまでもふるさとの歴史と風土を大切にして、次の世代に繋げていって欲しいものです。
◆「義農 石上清兵衛」について詳しくお知りになりたい方は・・・
石上清兵衛 顕彰会
連絡事務所 谷澤 靖策 ℡ 054-635-0986
取材:志太・榛北地区担当 生きがい特派員 宮島克実